ストレスの正体とメカニズム
目次
ストレスとは

おそらく「消せないイライラ」や「嫌な感情」と答えるでしょうか?
この答えは間違ってはいませんが、具体的ではありません。
ストレスの実体を早速見ていきましょう。
ストレスとは心身の歪みのこと

簡単に物理的ストレスで表現しますと、人指し指でほっぺたを押したら、強度の分だけへこみます。それがストレスです。
人間は一定の状態を保つよう調節機能がある為、強度が低かったり時間が短ければ何の問題も起きませんが、強度が高かったり時間が長かったりすると傷がついたり形が変わったりしてしまいます。
また、社会的(心理的)ストレスでは、私たちの日常で起きている*1 ライフイベントが刺激となり、その刺激に対応しなければならない時、人はストレスを感じてしまいます。
*1 ライフイベント…別れ、結婚、マイホームを手に入れた、恋人ができた、昇進した、引っ越した、体調が悪い、人間関係がうまくいっていない 等々
昇進したら責任が重くなるなどポジティブな事であってもストレスになり得ます。
ライフイベントにおけるストレスを点数化した論文資料(ホームズの社会的再適応評価尺度を日本版にしたもの)
ストレスは大きく3つに分かれる

例) 疲労、睡眠不足、ウイルス感染の病気、花粉症の不快感
2.『物理的ストレス』・・・外からの物理的な刺激がストレッサーになって発生するストレスのこと
例) 暑い、寒い、照明が明るい、暗い、荷物が重い、針が刺さっていたい
3.『社会的(心理的)ストレス』・・・人間社会を生きる上でのさまざま出来事や経験がストレッサーになって発生するストレスのこと
例) 人間関係のいざこざ、仕事や生活への不満、葛藤(会社の飲み会出たくないが、付き合い悪いやつと思われたくない…)
等があります。
カナダの生理学者ハンス・セリエによって1935年に「ネズミの母胎内胎盤の生理研究」の論文の中で「ストレス」が医学的に使われた最初の例だそうです。
ストレス発生のメカニズム

※ 扁桃体は、神経細胞の集まりで情動反応の処理と短期的記憶において主要な役割を担っている
このホルモンを受けて、心臓は全身の筋肉にエネルギー源となる糖と酸素を送りこむため、心拍数を急激に増加させます。危険に対処する為、身体が準備を始め交感神経が優位な状態になります。
交感神経が優位な状態というのは、戦闘モードのことです。呼吸が早くなり瞬発力が高まり、ケガをしても血液凝固がしやすくなります。私達人間は進化の過程で野生動物を狩るときに求められていた体のモードなのです。
ストレスには危険を察知し、身体能力をUPしてくれるメリットもあるのですが、逆にデメリットも生じます。胃腸の働きが悪くなり、免疫細胞の働きを低下させてしまうのです。ストレス反応では、消化機能や免疫力などを犠牲にし一時的に身体能力を高めてくれていると考えることができます。
※ 昔は狩りの時に使われていた交感神経ですが、現代社会では至る所で交感神経が優位になってしまいます。複雑化した人間関係や情報、仕事、乗り物(車、バイク等)などストレス要因になる刺激で溢れているため、常にストレスを感じやすい状況なのです
そして、長期化したストレスの弊害として思考力や集中力が低下し、脳の組織にも変化が生じ、精神的に不安定な状況に陥ってしまうのです。
※ 精神的なストレスが脳の縫線核に蓄積され、セロトニン(心を安定させるホルモン)神経の働きが悪くなります。その為、うつになりやすくなります。
↓ 長期的ストレスによって現れるさまざまな症状の一部
高血圧 | 心理的ストレスにより脳から副腎ホルモンが分泌。ストレスに抗うために結果的に血圧が上昇する |
心臓病 | 血圧が高くなることで血液の圧力が高まり、動脈が傷つきやすい状態になる |
頭痛 | 長時間の同姿勢や、緊張した状態が続くことで緊張型の頭痛や片頭痛もストレスの原因として考えられる |
下痢・便秘 | 腸は「第2の脳」と言われるようにストレスの影響を受けやすい。緊張から下痢や便秘を引き起こす |
自律神経失調症 | 社会的(心理的)ストレスが原因で、慢性的な疲労や動悸、めまいなどの症状を引き起こす。憂鬱、イライラなどの精神的症状も出やすくなる |
不眠症 | 不安や緊張のストレスから神経が刺激され、脳が覚醒している状態で脳が休まらない。結果寝れなくなる |
がん | ストレスが原因で免疫機能が低下し、がん細胞を破壊しきれなくなり、細胞ががん化し増殖する |
ストレスに強い人・弱い人の違い

※ 脳は可塑性があるので、環境や人格が変われば偏桃体の大きさも変化します
もう1つは人格です。遺伝も関係しており生まれつきストレスを受けやすい人もいます。人格とは、思考・価値観・信念・情緒・態度・行動の個人的特徴のことを言います。
ストレスに強い人格の特徴として、「自己肯定感がある」「レジリエンス力がある(困難な事があっても立ち直れる力)」「自己実現を目指し努力をしている」が挙げられます。
※ 人格の約50%は遺伝の影響を受けますが、残り50%は環境や信念、行動などで変わってくるので、認知行動療法を行っていく事でストレスに強い自分へ変化させることが可能です。
ストレスにはメリットもある
イェール大学のアリア・クラムとピーター・サロベイの新しい研究によれば、ストレスにもメリットがあると述べています。困難や災難を経験(あるいは予期)することで私たちはストレスを感じるが、交感神経(闘争・逃避反応)が活発になり、身体に「活」が入る。
そして覚醒レベルと集中力を高め、行く手を阻む障害に対処するために、肉体的・心理的な準備を整える効果があると言います。
つまり適度なストレスは、パフォーマンスを向上させることにつながっているのです。
得たいの知れないストレスへの気づき方
手順1: 自分は今ストレスがかかっていて、こういう身体症状(例えば筋緊張、交感神経が優位になっている)になっているのかと気づくようにします。手順2: 「なぜ自分はストレスを感じているのか?」を自答する。
自分にとって大切なものを守ろうとしてストレスが起きているはずなので、そこを明確化することで、得体の知れないストレスに気づけるようになっていきます。
自分へのストレスに気づくことで、セルフモニタリング力を高めることになり、対処能力も上昇していくはずです。
参考
・宝島社,うつが消えるストレスコントロール術,P11-P64
・NHKスペシャルキラーストレス,http://www.nhk.or.jp/special/stress/
・夏目誠,ライフイベント法とストレス度測定,https://www.niph.go.jp/journal/data/42-3/199342030005.pdf
・DIAMOND,ストレスの意外なメリットを享受する法 http://www.dhbr.net/articles/-/2626
・ストレスを操るメンタル術
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